近年,パワーアシスト技術の医療,福祉現場への応用が盛んに研究されている.これまでの研究では,上肢または下肢の関節トルクを制御する,または動作を生成することにより補助部位全体の負荷を制御してきた.しかし,これらの方法では末梢神経などに障害を持つ患者の筋萎縮防止などに利用すると,健常な筋肉にまで影響を与えてしまう可能性があった.
本研究室では,パワーアシスト装置を用いて特定の筋肉の発揮力のみを制御するピンポイント筋力制御手法を提案した.この手法により,ユーザが選択した筋肉のみ負荷を制御することが可能になり,目的の筋肉を補助または鍛えることが可能になる.これまでの研究で選択した筋肉(対象筋肉)を制御できることは確認できたがが,計算を容易にするために姿勢の影響を考慮していなかったため,選択していない筋肉(非対称筋肉)への影響が大きくなっていた.
本発表では,姿勢と外力の最適化により対象筋肉の目標発揮力を実現するとともに,非対称筋肉への影響を小さくする手法を紹介する.今回は,リハビリテーション,トレーニング現場で利用される等尺性運動時および等張性運動時においてピンポイント筋力制御を実現するための手法について紹介する.シミュレーションおよび実機実験による表面筋電データを用いて提案手法の有効性を検証した.