OFDM方式を用いた非再生中継システムにおける適応電力割当手法の検討

原口 修平 (0851092)


OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用いた非再生中継システムを導入することで,マルチパスフェージング耐性に優れた高速な無線通信環境を拡大することが可能である.既存研究において,この非再生OFDM中継システムにサブキャリア毎の適応電力割当を用いることで伝送レートの向上が可能であることが示されている.しかしながら,既存研究で示された適応電力割当手法を実際のシステムに適用するには,中継局においてFFT(Fast FourierTransform)/IFFT(Inverse FFT)が必須となり,純粋な非再生中継方式では実現できない.これにより非再生中継の特徴である低遅延性が損なわれるため,再生中継に対する利点が得られない,SFN(Single Frequency Network)への適応性が減少するなどの問題が生じる.

そこで本研究では,中継局においてFFT/IFFT を必要としない純粋な非再生OFDM 中継システムを対象として,このシステムの伝送レート向上を目的とした適応電力割当手法の検討を行う.提案手法として,中継局において複数の隣接サブキャリア(チャンク)毎の適応電力割当を行う2 種類の手法と,全てのサブキャリアに対して一様な電力割当を行う手法を検討する.システムの伝送レートを最大化するために,各提案手法における割当電力の最適化問題を設定し,解の導出を行う.数値例により,各提案手法に基づく適応電力割当の伝送レート特性を明かにするとともに,チャンクを用いた提案手法においてそのチャンク幅を適切に設定することで,適応電力割当の上限値と同程度の伝送レート改善効果が得られることを示す.