MANETによる携帯端末でのワンセグ難視聴端末救済手法

布川 雄大 (0851083)


 本発表では,ユーザが無線通信可能なワンセグ携帯端末を所持していると想定し,近隣の複数携帯端末がアドホックネットワークを形成して,電波受信品質の良い端末から難視聴端末に対してデータ中継を行うことで難視聴端末の視聴品質を向上させる手法を提案する.提案手法では,近隣端末間で受信品質およびデータ中継状況に関する情報を定期的に交換する.そして,各難視聴端末に対し同一チャネルを高品質で受信している端末から当該端末への無線通信帯域制約を満たした上で,救済される端末数ができるだけ大きくなるようなデータ中継パスを発見する.また,難視聴端末は,必ずしも近隣エリアにいる端末群と同一のチャネルを受信しているとは限らないため,データ中継パスが発見できずに救済されない場合がある.このような場合における救済率を向上させるため,ある近隣端末が現在受信中のワンセグチャネルを難視聴端末が受信したいチャネルに切り換えてデータ中継を行い,自身は他の近隣端末による救済で視聴を維持する代理受信アルゴリズムを提案する. 提案手法の性能を評価するために,ビルが林立する市街地,電車の駅構内などを想定したシミュレーション実験を行った.実験では,難視聴端末を救済する際に使用した電力消費に対してインセンティブモデルを導入した.また,現実環境に近い視聴者移動モデルも導入し,移動性と代理受信アルゴリズムの有無による救済率に対する影響を精査した.その結果,難視聴端末の難視聴時間のうち,ビデオ品質が改善する時間の割合は代理受信アルゴリズムを適用した2ホップの転送で最大で約70%に達することを確認した.