本発表では,初期診断支援システムは,知識収集部・推論機構部・知識検索部の3つから成り立っていると考え それぞれにおける課題解決の手法を述べ,臨床現場へ導入可能な初期診断支援システムについて述べる.
まず,知識収集部では,症状に対して疾患を定義するような知識構造ではなく, 疾患に対して症状を定義するような知識構造を持たせた.そして,初期診断に必要な知識を多数の人間が並行して入力可能な仕組みについて述べる. 次に,症状・所見に付随する修飾語(属性値)等を用いて,候補疾患を絞り込む診断ロジックについて述べる. 続いて,知識収集部で収集した知識を検索するための知識検索部について述べ, 最後に,知識収集部・推論機構部・知識検索部を連携させ,知識収集,及び知識検索が可能か検証した検証試験について述べる.
結果,医学教科書を知識源とした知識収集が可能で,収集した知識を元に候補疾患の出力が可能であることを確認した. また,初期診断支援システムの持つ課題も解決され,システムの臨床現場への親和性が高まったといえる.
本システムが導入されることで,初期診断支援システムが臨床現場で継続的に利用され,初期診断の誤診による医療事故の防止に繋がると期待される.