移動カメラを用いて異なる地点・時刻に撮影された全天球画像群を入力として画像処理を行なう研究では,入力画像間での色調の統一および画像中の動物体や陰の除去処理が要求される. 本研究では異なる地点・時刻において撮影された映像から,動物体・陰・色調の差異による見え方の違いを取り除いた全天球画像データベースの作成を目的とする. 従来,撮影された画像間において照明条件が大きく変化するような環境では動物体除去が,また動物体や陰が存在するような環境では色調変換が困難であった.そこで本研究では,線形濃度変換パラメータの推定処理と動物体候補領域の推定処理を交互に繰り返し行うことで,これらの問題を同時に解決する.まず,格子に分割した入力画像に対し,ロバスト推定により動物体が含まれない領域のみを用いて線形濃度変換パラメータを求めることで色調変換を行ない,その結果を用いて画像間の差分から動物体候補が含まれる格子を検出する. その後,動物体候補が含まれる格子の分割を行ない,再び分割された各格子に対して線形濃度変換パラメータの推定を行なうことで動物体候補領域を絞り込む. これを繰り返すことで,線形濃度変換パラメータの推定と動物体候補領域の推定を同時に行なう. 最後にそれらの処理が行なわれた画像群を用いて動物体候補と推定された領域を補完することで,動物体の除去を行なう. 実験では,屋外環境において車載全方位カメラで異なる地点・時刻に撮影された全天球画像群の色調の統一および動物体や陰の除去を行なった結果を示す.