オーディオオブジェクト操作法とイヤホン漏洩雑音低減への応用に関する研究

鈴木 翔太 (0851058)


本発表では,マルチチャネルオーディオ信号における各楽器音の個別操作法の 提案,及びそのイヤホン漏洩雑音低減への応用について述べる.音楽の高臨場感 再生技術の成熟に伴い,信号のマルチチャネル化による信号伝送量の増加が問題 となっている.また,音楽信号に含まれる各楽器音をユーザが自由に操作可能な 「創臨場感」再生システムの実現に期待が高まっている.更に,イヤホンを用いた 携帯型小型音楽プレイヤーの普及に伴い,時間や場所を問わずに音楽鑑賞可能な 環境が整いつつある.しかし,電車内等の高騒音下においてイヤホン受聴を行う 場合,受聴者が音楽の大音量再生を行う事がある.この際,イヤホンと耳の間か ら受聴者周辺に漏れる不快な雑音(イヤホン漏洩雑音)が社会問題となっている.

本発表では,マルチチャネルの音楽信号を,各楽器の持つ定位方位情報を基に 空間的に量子化する手法に基づき,同一方位に定位する各楽器音(オーディオオ ブジェクト)の音量・定位感を操作する手法を提案する.また,本技術の応用例 として,特定の周波数帯域が強調されドラム等の断続音が特に漏洩するというイ ヤホン漏洩雑音の特徴に基づき,オーディオオブジェクト毎に漏洩判定して抑圧 する,イヤホン漏洩雑音低減手法も提案する.オーディオオブジェクトの音量・ 定位感の操作性を主観評価実験により評価した結果,特定のオーディオオブジェ クトを操作可能である事が明らかとなった.また,イヤホン漏洩雑音低減手法の 有効性を客観評価,主観評価実験により評価した結果,従来手法に比べて低減処 理後の受聴音質を保持しつつ,イヤホン漏洩雑音を低減可能である事が明らかと なった.