3Dプリンタを用いた観賞用模型制作に関する調査

坂本祥治(0851050)


三次元CADや3Dモデリングソフトによって制作された3Dモデルデータを立体物として出力可能な3Dプリンタは工業製品の設計開発の現場において,形状や部品同士の干渉を確認する為の試作模型制作に用いられてきた. 製品寿命が短くなり高速な製品開発が求められる近年では,試作品模型制作を機械化できる3Dプリンタは工業製品の設計開発の場では不可欠なものとなっている.

一方で3Dプリンタはその普及に伴い,試作品模型制作以外の用途でも用いられるようになった.その内の一つが3Dプリンタによる観賞用模型制作である.3Dプリンタの造形能力を活かして,建築物やゲームのキャラクター等の様々な観賞用模型制作を請け負う立体出力サービスが展開されていることからも,3Dプリンタによって観賞用模型を制作したいという要求がある事が読み取れる.

3Dプリンタによって観賞用模型制作を考えた場合,試作模型と異なり形状だけでなく仕上がりの色や質感の再現が重要となる. その為,実際に3Dプリンタによる観賞用模型制作する事を考えた場合,機器の選定や出力した造形物の加工など様々な問題が発生する事が予想される. そこで,本調査では観賞用模型制作に用いる3Dプリンタ及び観賞用模型制作の為の付加加工法を調査する. 百済大寺九重塔を制作の例とし,観賞用模型の制作に必要な技術を報告する. この九重塔は現存する仏教建築同様に複雑な構造と木材,金属,陶器等の複数の素材から構成されている為,観賞に耐える外観を持った九重塔模型制作にあたっては形状の再現だけでなく,色と質感の再現性が必要となる.

調査の結果,観賞用模型制作にはカラー出力に対応したインクジェット式3Dプリンタが適している事が分かった. 次にこの3Dプリンタによって出力した造形物の強度,形状の再現性,色の出力特性を調べ,意図通りの形状と色彩を持った造形物を得る為の付加加工法を検討した. 付加加工法として,造形物に樹脂を浸透させる含浸処理及び質感表現の為の表面加工方法を実際に試し有効性を確認した. 本発表では調査の結果得られた,観賞用模型制作に必要な技術について延べる.