OSS開発における時差の分析: OSS開発者の情報交換への影響

小山 貴和子 (0851047)


OSSは世界中に点在する開発者によって開発され,開発者はタイムゾーンの異なる地域間で情報交換を行う.多数の開発者が参加する大規模なOSSプロジェクトでは,開発者による情報交換を通じた意思決定や合意形成が重要である.しかし,時差の存在する地域間で行われる情報交換はタイムラグを引き起こすと考えられ,タイムラグは迅速な開発の妨げとなる可能性がある.近年,不具合やセキュリティの脆弱性などOSSに発生する問題に対する早急な対応が求められているため,OSS開発者間の効率的な情報交換を実現するためにタイムラグの実態を調査する必要がある.本研究は,OSSプロジェクト内における情報交換のタイムラグの実態を解明し,情報交換の所要時間を短縮化するための指針を得ることを目的とする.本論文では,OSS開発における情報交換においてタイムラグが発生する要因に関する仮説と,タイムラグが開発者間の情報交換に与える影響に関する仮説を,複数のOSSプロジェクト対象に検証した.その結果,メッセージの送信先地域の時間が深夜である場合,日中に比べて開発者間の情報交換にタイムラグを引き起こす可能性が高いことがわかった.また,時差の影響を受けずに情報交換を行うことが可能な時間は少なくとも3時間存在することがわかった.