拡張現実感システムにおける利用者と対象物体の位置を考慮した指示対象部位の推定
小林政善 (0851045)
拡張現実感は現実環境に計算機内の仮想情報を重畳して提示する技術で,近年さかんに研究が行われている.
拡張現実感を活用したシステムで利用されている情報提示手法として,物体の一部をハイライト等により強調表示させた映像を利用者に提示する手法がある.
物体の一部を強調表示させた映像を提示することにより注目を集めたい領域を視覚的に明示することが可能であり,注釈情報の対象の明確化や協調作業時のコミュニケーションの円滑化に役立つ.
拡張現実感システムにおいて利用者が選択した部位を推定し,その領域を強調表示した映像を利用者に提示するためには,システムは(1)対象の物体がどのようなパーツの集合に分割できるのかを知り,(2)それらのパーツ集合の中で利用者がどのパーツを選択したを推定する必要がある.
本研究では,レーザーレンジスキャナを用いて計測した物体の3次元点群を解析することにより,上述の問題を解決する手法を提案した.
提案手法では,まず局所的な物体表面の曲率を手がかりに3次元点群を複数のパーツに分割する.
利用者が選択するパーツは,利用者の置かれた状況や利用者の意図に応じて,対象の物体をある詳細度で分割したパーツの中の1つであると考えられる.
提案手法は,利用者によるパーツ選択指示があった際に,あらかじめ複数の詳細度で分割した対象物体のパーツ群の中から候補パーツを抽出する.
それらの候補パーツの中から,利用者と対象物体の位置関係を手がかりとして,指示対象部位であるパーツの推定を行う.
実験では,利用者と物体の位置関係をもとに適切な指示対象部位の推定が行われていることを確認し,提案手法の有用性について検証した.