スマートスペースにおける複数ユーザの嗜好の推測に基づくデバイス制御法
神山 直也(0851042)
本発表では,ユビキタスシステムが導入された空間において,多種多様な嗜好を持つ不特定多数のユーザが自由に出入りする空間を想定し,ユーザ満足度の最大化を目的としたデバイス制御手法を提案する.
提案手法では,対象空間にデバイス(エアコンや電灯等) を制御するサーバがあり,サーバには制御可能なデバイスや温度・湿度など,空間に関する情報が与えられていると想定する.
また,各ユーザは携帯端末を所持しており,サーバと無線通信で情報の交換が可能であるとする.
本手法では,ユーザがある対象空間に入ると,サーバがユーザの所持する端末と無線通信を行うことで嗜好情報を収集し,全ユーザの嗜好に合わせてデバイスを制御する.
温度や湿度などの環境情報や,その時の忙しさなどのユーザの状態をコンテキストとして定義し、ユーザはコンテキスト毎に嗜好(温度や湿度に対する満足度)を持つとする.
対象空間に設置されたサーバが,コンテキスト情報と各ユーザの嗜好情報から複数ユーザの満足度の和が最大(あるいは最低満足度が最大)となるデバイス制御を行う.
この方法では,どのようなコンテキストに対してもユーザの満足度が予め取得できている必要があるが,コンテキストのとりうる値の範囲は広大であり,すべてに対して満足度を設定することは困難である.
そこで,コンテキスト間の距離を定義し,距離に応じて取得済みの満足度から補間することで,新規に出現したコンテキストに対する満足度を推測する方法を提案する.
提案する推測法では,あるコンテキストに対するユーザの満足度を,既に満足度が計測されている複数のコンテキストからの距離の加重平均として推定する.
提案する推測法の有効性を検証するために,アンケートをとり,その結果によるサンプルを基に本手法による推測の精度を評価した.
満足度を4段階(快適,少し快適,少し不快,不快)で表した所,推測の元になる嗜好情報が十分に入力されている場合,嗜好の推測手法は,推測誤差が4段階中1未満となり,実用上十分な推測精度を持つことが分かった.