測位精度を考慮したGPSの併用による動画像からのカメラ位置・姿勢推定

粂 秀行 (0851038)


現実環境を撮影した動画像に対するカメラの位置・姿勢情報は三次元形状復元や自由視点画像生成,拡張現実感をはじめとする多くの分野への応用が可能である.しかし,動画像のみからカメラ位置・姿勢を推定する手法には推定結果に誤差が蓄積するという問題や,スケール情報が得られないという問題がある.このような問題に対し,動画像に加えてGPS を併用することで,広域屋外環境において低い人的コストで絶対位置情報を推定可能な手法が従来から提案されている.しかし,従来手法には,特にGPS の測位精度が低い場合などのように,短時間の観測において平均測位位置が真値から大きく外れる場合においてカメラ位置・姿勢の推定精度が大きく低下するという問題がある.これは,従来手法がGPSの測位誤差として平均値0の正規分布を仮定する一方で,実際の短時間におけるGPS の測位誤差の分布がこのような正規分布で適切に近似できないことに起因している.加えて,多くの手法はGPS の測位精度がGPS 電波の遮蔽や反射,衛星の配置等によって大きく変化することを考慮していない.これらの問題に対して,本研究では,GPS の測位誤差を単一の正規分布でモデル化する代わりに,GPS受信機の真の位置がGPS の測位位置を中心とする,GPS の測位精度(RTK-fix,RTK-float 等) に依存した一定の範囲内に存在することを仮定する.この仮定に基づくエネルギー関数を最小化することで,GPS の測位精度に応じて動画像からのカメラの位置・姿勢推定結果を補正する.これにより,GPS の測位精度が低い場合にカメラ位置・姿勢の推定精度が低下することを防ぐ.実験では,屋外環境下で取得した動画像とGPS 測位値を用いてカメラ位置・姿勢推定を行い,従来手法と比較することで,提案手法の有効性を検証する.