視覚障がい者のための化粧支援風圧ディスプレイ

木村 有里(0851034)


化粧とは人間にとって重要な意味を持つ行為であり,化粧を行うことで現状をより良く見せ, 精神的にも心理的な向上に影響を与えるともいわれている. しかし,その化粧を行うことが困難な人々が存在する. 化粧は鏡を用いてどのように見えているか確認しながら行う作業である. そのような視認を伴う作業は,自身の顔の認識も難しいような強度の視覚障がい者にとっては困難なものである. 化粧は塗り残しや塗りすぎで化粧斑が起こることがある.しかし,化粧斑自体に極端な凹凸がないため,触ることで確認することはできず, 鏡を用いた視認以外の手法では発見と訂正ができないため,視覚に強度の障害を持つ人には, 一人で行うことが困難な作業である. このような問題を解決するには,視認作業を代行し,化粧斑位置を提示し,視覚障がい者に自身の化粧の問題部分を 認識させるシステムが必要と考える. 化粧斑位置の提示手法には直接その位置に触れることで提示する触覚を用い,顔面への触覚提示に風圧を用いることで, 正しく塗れている化粧部分を崩さないように触覚提示を行うことが出来る.

本発表では強度の視覚障がい者に対しての化粧支援を目的とし, 化粧斑等の対象者に知らせたい顔面上の位置を,風圧を用いて提示する風圧ディスプレイの提案とそれを用いて行った実験の結果と考察を行う. 提案システムは、対象者の正面に設置されたカメラで対象者の顔画像を撮影し, 化粧斑等の対象者に知らせたい位置を画像中で決定し,その位置に事前にカメラ画像と位置合わせを行った風圧提示装置を移動, 装置から噴出された風を与えることで対象者への位置提示を実現した. 風圧提示装置はパンチルト台上にエアブラシを搭載し,噴出を電磁弁で電子制御することで実現する.

実験では,試作した風圧ディスプレイを用いて,頬,額,顎,鼻の顔面上の4つの部位で2点の刺激の相違を感知する最小の刺激差である二点弁別閾の測定と,実際に被験者の顔面の指定した位置に風圧を与えることで,その位置を的確に被験者に伝えることが可能かの調査を行った.また,実験で得られた結果をもとに刺激に風圧を用いた場合の二点弁別閾を明らかにし,風圧を用いて顔面上の位置提示を行うことの有用性を示した.