ソフトウェア設計文書メトリクスを用いた低品質モジュール予測

片山 真一 (0851024)


近年,ソフトウェアの社会的位置づけが重要性を帯び,高品質なソフトウェアへの需要が高まっている.不具合の発見が遅れるほどその修正工数が増大するため,開発の早期において多くの不具合を含む可能性のある低品質モジュールを特定することが求められている.そのため,線形判別分析などのモデルを用いた様々な予測手法が提案されている.しかし,従来手法では主にソースコードから計測されたメトリクスを用いていたため,予測のタイミングが実装工程完了後に限定されていた.また,欠陥の有無でモジュールの品質を判断しているものが多く,欠陥の多寡を考慮したものは少ない.本発表では設計書の規模,変更量などの設計文書メトリクスを用いて,相対的により多くの欠陥を含む可能性が高い低品質モジュールの予測を試みた.これらのメトリクスを利用することで設計工程完了時に予測を行い,実装工程における品質改善活動に寄与することができる.重回帰分析・遺伝的プログラミングを複数のソフトウェア開発企業が共同で行ったプロジェクトに適用した結果,ランダムにモジュールを選択する手法,設計書のページ数の多い順にモジュールを選択する手法に比べて約40%高い精度で低品質モジュールを特定することができた.