DARC方式FM文字多重放送における繰り返し伝送による誤り率改善手法に関する研究

片渕 雄一 (0851023)


DARC(DAta Radio Channel)方式FM(Frequency Modulation)文字多重放送は,VICS(Vehicle Information and Communication System)情報の送信手段の一つである. DARC方式では,データ変調方式としてLMSK(Level-controlled Minimum Shift Keying)方式,誤り訂正符号として(272,190)短縮化差集合巡回符号の積符号が使用されている. FM放送に多重するデジタル信号の強さが強すぎるとFM放送のステレオ差信号に干渉を与えるが,LMSK変調は差信号の強さにより多重信号の強さを決めるため有効であり,誤り訂正符号はインパルス雑音対策に有効である. しかし,マルチパスフェージング環境ではDARC方式の受信性能が十分でないことが問題である. これは同システムの受信手法として単純なブロック符号の誤り訂正が使用されているためである. 現状では,VICS情報を送信しているフレームの半分は使用されていない. そこで本論文では,DARC方式FM多重放送におけるVICSのマルチパスフェージング環境における受信性能改善のため,フレームの半分が使用されていないところ有効活用する. 送信機側では同じデータを送信する繰り返し伝送とそれに対応した誤り訂正手法として受信機側では,二つ送信されたデータの誤り訂正後の残留誤りを互いに比較し,良好なパケットを選ぶパケット比較と信頼性情報を用いたパケット合成を提案する. 数値例により提案手法であるパケット比較,パケット合成は従来手法に比べ,2パスレイリーフェージング環境におけるBER(Bit Error Rate)$10^{-3}$,PER(Packet Error Rate)$10^{-2}$を達成するCNR(Carrier-to- Noise Ratio)が最大でそれぞれ10 dB,6 dB改善する結果が得られた.