内視鏡下脊椎後方手術計画支援のためのボリューム切削システムの開発

井上 喜仁 (0851010)


近年,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎外科手術において,内視鏡手術が試みられるようになってきた.内視鏡下脊椎後方手術において,患者の椎間関節をより温存し,安全に治療をおこなうために,術中ナビゲーションを用いた手術が注目されている.このようなナビゲーション下の手術を実施する際には,患者の実測CTボリュームデータに対して想定する脊椎や軟骨などの切削範囲を綿密に計画し,入力することが求められる.ここで,二次元断層画像上での逐次領域指定には時間を要するだけでなく,切削予定の三次元領域の二次元断面を医師が適切に想像しつつ指定する必要が生じる.一方でボリュームレンダリングによって生成された像への切削範囲の直接入力では複雑な三次元領域の指定をどのように支援するかという点に課題が残る.領域入力に三次元入力デバイスを用いた場合,奥行き情報も含めて三次元位置が入力可能であるが,切削時の奥行きが理解しにくく,また,医師がデバイスの扱いに慣れる必要があるといった問題がある.また,領域入力に二次元入力デバイスを利用した場合,奥行き情報は表面検出よって取得されるが,想定領域外の点を検出した場合に想定領域外を切削してしまうといった問題がある.
本研究では,内視鏡下脊椎後方手術計画支援を目的として,ボリュームレンダリング像に対して二次元操作で,かつ,直接的に任意の三次元切削領域の入力を可能とする方法について述べる.ボリュームレンダリング像を切削する際の問題として,対象物体を容易に貫通してしまう,不連続領域へ切削が及んでしまうなどがあげられる.そのため,一度の切削を表層に限定する「深さ方向への切削に対する制約」と,切削を連続領域に限定する「不連続領域への切削を防ぐ制約」を提案する.
テストデータに提案手法を適用し,切削シミュレーションを実施し検証した結果,切削範囲を限定した切削が可能であり,提案手法の有効性を確認した.また,術前実測CTデータに提案手法を適用し,切削シミュレーションを実施し検証した結果,同じ患者の術後実測CTデータと同等の結果を得ることができ,術前計画システムにおいて有用性を確認したので報告する.