重要度とデッドラインを考慮した情報BOX経由のDTNデータ配送手法

石丸泰大 (0851005)


本研究は,DTN環境において, メッセージの重要度や配信期限(デッドライン)を考慮し,重要かつ緊急性のあるデータを優先して処理することによって, 輻輳が発生しても,重要度の高いデータの配送率をできるだけ高くすることを目的とする. 提案手法が運用されるサービスエリアには, Bluetooth機能を備えたバッテリ駆動の小型PCが幾つかの地点に情報サーバ(以降,情報BOXとする)として配置されると想定し, 情報BOX間の直接通信はできないとする.ユーザはBluetooth機能を備えた携帯端末(携帯電話,ノートPCなど)を所持しており, 情報BOXとデータの送受信をBluetoothを介して行うが,ユーザ間の通信は行わないものとする. また,情報BOXは情報BOX間を往来するユーザの移動確率の統計的データを把握しているとする. ある情報BOX(SRCとする)と通信可能なユーザは, その情報BOXにリクエストを送信することでシステムを利用する. リクエストは, 「将来訪れる情報BOX(DESTとする)に保存されているデータを 途中で訪れる別の情報BOX(RLとする)において受け取りたい」 という形式で記述されるとする. リクエストには,リプライを得たときの満足度と,デッドライン(RLを出発するまでの予定時間)が付される. 提案手法では, 情報BOXはリクエストを受信すると,それをDESTまで届け,リプライをDESTからRLに届けるために,情報BOX間のユーザ移動確率に基づいて必要数のデータを複製し, 複製したデータを異なるユーザに渡すことで,適切な複製数で高い配送率を実現する.また,輻輳が発生した際に無駄な帯域消費を防ぐため,処理するデータの取捨選択を行う.この際, (1)情報BOXがコストパフォーマンス(単位データ量に対する満足度, 以降ECPと呼ぶ)を計算し,ECPの高いデータを優先的に配信するようキュー管理を行う, (2) デッドラインに間に合わないと見積もったデータをキューから廃棄する, (3)情報BOXがデッドラインに間に合わないと判断したデータの受信を拒否する, といった工夫により,不必要なデータ運搬を省き,システム全体で達成される満足度の総和を最大化する.