高次統計量に基づくミュージカルノイズ制御型アレー信号処理の研究

石川陽平 (0851004)

本研究では，ミュージカルノイズ発生量を制御可能なマイクロホンアレー信号 処理手法を提案する．マイクロホンアレーを用いた雑音抑圧において，線形アレー 処理と非線形信号処理を統合した雑音抑圧手法が数多く提案されている．これら の手法は高い雑音抑圧性能を有するものの，非線形信号処理に伴うミュージカル ノイズと呼ばれる耳障りな人工的な音色の歪みを生じてしまう．そこで，ミュー ジカルノイズ発生量の少ない線形アレー信号処理と非線形信号処理の統合手法と して，チャネル毎スペクトル減算(SS) と遅延和(DS) ビームフォーマの統合手法 chSS+DS が提案されている．ただしchSS+DS は，空間的無相関な雑音の抑圧の ために設計されており，点音源雑音のような相関を持つ雑音に対しては適用でき なかった． 本研究では，多様な雑音環境において高品質な雑音抑圧が可能な手法の開発を 目的とする．まず，点音源雑音の効果的な抑圧を実現するために，chSS+DS の DS 部をMVDRビームフォーマに変更する．次に，一定のミュージカルノイズ発 生量に制御するために，SS のパラメータを雑音に適応する可変係数とする．さら に，ミュージカルノイズ発生量の自動計量のために，高次統計量によるミュージ カルノイズ評価尺度を新たに用いる． 提案手法を評価するため，通常室内や公共環境を含む様々な音響環境におい て雑音抑圧実験を行った．その結果，提案手法は従来の線形適応アレー信号処理と非線形ポストフィルタリングの統合手法と比較して，様々な音響環境において ミュージカルノイズ発生量が少なく，より優れた雑音抑圧性能を達成できること がわかった．