独立成分分析を用いた初期視覚野の同心円型受容野の形成
青木 孝剛 (0851001)
視覚情報処理に関する生物学的知見として,初期視覚野には4種の受容野が存在することが知られている.
白黒ガボール型,一重反対色同心円型,二重反対色ガボール型,二重反対色同心円型の受容野である.
情報学的観点から,冗長度圧縮原理を用いた数理モデルを用いて,
初期視覚野における白黒ガボール型と二重反対色ガボール型の受容野が形成されることが知られている.
しかし,一重反対色同心円型と二重反対色同心円型の受容野を形成にする冗長度圧縮モデルは存在しない.その理由として,
外側膝状体が持つローパスフィルターがモデルに入っていないことを考えた.外側膝状体は初期視覚野へ投射を持つため,
初期視覚野の受容野形成機構としては妥当である.
そこで本研究では,カラー画像に対しローパスフィルターを適用し,視覚入力としての学習データを作成した.
そして学習データに対し,冗長度圧縮原理を実現するFast ICAを適用し,受容野に相当する基底関数を求めた.
その結果,これまで実現されていなかった二重反対色同心円型の受容野特性を形成できたが,一重反対色型はできなかった.
その理由として,二重反対色同心円型の機能が,一重反対色同心円型の機能を含んでいることが考えられる.
また,基底関数の形状は画像中に含まれる形状に依存し,反対色対は学習サンプルが持つ色相関に依存するという結論も得られた.