遺伝子機能推定を指向したタンパク質の分子系統解析

夏原 一彰 (0551147)


ゲノムプロジェクトの急速な進展に伴い、非常に数多くの機能未知遺伝子の配列情報が蓄積されつつある。 実験的に遺伝子の機能を確立することは非常に時間のかかるプロセスであり、配列情報からの機能予測はバイオインフォマティクスの最も重要なタスクのひとつである。  本研究では、金属イオンに配位するタンパク質について配列情報による分子系統解析を行い、金属イオンを配位するアミノ酸残基に着目してその機能進化の過程を推定することを試みた。対象として、ウレアーゼを含むTIMバレル構造を有するタンパク質スーパーファミリーを選択した。このスーパーファミリーに属するSCOP分類済の既知の15のファミリーを含むタンパク質のアミノ酸配列を悉皆的に収集し、すべての配列を含む分子系統樹を作成した。作成した系統樹を解析することにより、このスーパーファミリーのタンパク質が配位する金属イオンの種類と数を変化させながら分子機能を進化させてきた過程を推定できた。また、配列ロゴ解析を行うことにより、既知SCOPファミリーとは別の、金属を配位しアミドハイドロラーゼに類する機能を有すると考えられる6個のタンパク質ファミリーを同定した。そのうち4つのファミリーは機能同定されたものであるが、残りの2つは機能未知の新しいタンパク質ファミリーであると考えられる。