KrevelenPlotの拡張による代謝物質の悉皆的解析への応用法

松田かおり (0851110)


この研究の目的はKrevelenPlotの拡張によって様々な代謝物質の代謝反応を視覚的に比較可能とすることにある。

メタボロミクスでは遺伝子との相関を知るために代謝物質の悉皆的な解析が大変重要である。しかし未だに代謝反応経路における代謝物質について未解明なものも多い。代謝物質の全体像を既知の代謝物質から把握し、その化学構造の持つ特徴と反応経路の分類を行うことは未知の代謝物質の同定に役立つ。

先行研究によると、KrevelenPlotは代謝経路の全体像を示すことができる。ほとんどの代謝物質は主要元素の組成比率(H/CやO/C)に基づいてKrevelenPlot上に描画できるため、それらの分類、すなわち種類と構造的特徴を理解できる。また代謝反応の前と後の代謝物質の座標を線分で結ぶことで代謝反応を表現できる。一方、2次元のため座標値が重複しやすく主要元素以外は把握できないという表現限界がある。

本研究ではKrevelenPlotを既存の2Dから3Dに拡張することで、新しいグループやサブグループを判別することを目指した。そこで官能基の種類や反応の種類、化学種などに応じた軸の定義や軸の組合せを検証した。
さらに代謝物質の構造と種類によって特定のパターンに従う座標値と、代謝物質と酵素の反応によって特定のパターンに従うベクトルを調査した。

成果として、多様な構造を持つ代謝物質が比較的小さなグラフで表現しうることが判明した。またその化学組成の法則性を示すKrevelenPlotの拡張法を見出した。拡張法を適用して、特定の化学種を指す座標値とベクトルを分類した。 加えて既知の代謝経路の反応パスの特徴を3D 化と軸の組合せにより視覚的に比較できることを示す。
本調査結果の応用範囲は広く、精密分子量を用いた化学種の予測に適用可能である。また、代謝物質の全体像がグラフ上で確認できることから、人工合成物との比較が可能である。たとえばECO分野の視点から自然界で分解されにくい素材などの判別にも利用できると考える。