ネットワーク構成の変動に動的に適応するDHT管理手法の提案と評価

野口 悟 (0751201)


DHTによる構造化オーバレイネットワークは優れた資源探索能力,負荷分散性,耐障害性,規模拡張性を有し,クライアントサーバシステムにおけるサーバへのアクセスの一極集中にかかる問題を解決する手法として注目されている. しかしながらDHTにはノードのネットワークへの頻繁な参加および離脱(churn)に伴うネットワーク構成の変動に影響されやすく、下位ネットワークの近接性を考慮しないといった実用上の問題がある.

本論文ではノードの参加,離脱動作の履歴(セッション履歴)を収集し,将来のセッション持続時間を予測することでchurn頻度の変化に動的に適応するノード選択およびデータ配置を可能とする手法を提案する. また,合わせてノード間のRTTを考慮したノード選択をも可能とすることでノード探索における応答遅延の低減を図る. 提案手法を既存のDHTのルーティングアルゴリズムであるKademliaを改良する形で実装した上で,更にその上に性能評価用エミュレータを実装し,性能の評価を行った. その結果,提案手法によってメッセージ量の増加を抑えつつデータ取得成功率を約10\%向上することを示した.