三量体Gタンパク質αサブユニットに対する新規制御タンパク質の研究

水上 祐子 (0751152)


三量体Gタンパク質、Gα、GβならびにGγは、Gタンパク共役型受容体(GPCR)からの シグナル伝達経路における分子スウィッチとして、生体内で重要な役割を担っている。
GPCRは細胞外から刺激を受けると、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として、 不活性型であるGDPに結合したGα(GDP-Gα)を活性型であるGTPの結合したGTP-Gαに交換する。
これにより三量体Gタンパク質は下流のエフェクタータンパク質へとシグナル伝達をおこなう。

近年、in vitro においてGEF活性を示すRic-8Aが発見された。
Ric-8AはGPCRを介さずにGEFとしてGαを活性化することが知られており、線虫接合子や ショウジョウバエの神経芽細胞などにおける非対称細胞分裂に関与していることが示唆されている。
その作用機構モデルでは、Ric-8Aがグアニンヌクレオチド非結合型のGαと安定な複合体を形成して、 GDPをGTPに交換することによって、Gαを活性化すると考えられている。
Ric-8AはGβγと結合していないGα単体にのみにGEFとして機能することや、 Gαのサブファミリーに対するGEF活性に違いがあることが知られているが、 その詳細なメカニズムや生理的役割、ドメインやモチーフ構造は明らかとなっていない。

そこで本研究では、Ric-8AとGαi1との複合体の構造解析を通して、GEFによるGαの活性化機構の 詳細を明らかとすることを目的として、種々のコンストラクトについて結晶化スクリーニングを試みた。
また、Ric-8Aの物理化学的性質および変異体を用いた生化学的実験やバイオインフォマティクスによるフォールド予測をおこなった。
これらのデータを統合してRic-8Aの構造およびGαとの相互作用様式について議論する。