光ピンセットを用いた一分子DNA力学特性計測システム

深田 幹保(0751150)


細胞中では、ゲノムDNA に対してDNA 結合タンパク質が結合して遺伝子発現の調整を行っている。遺伝子発現のレギュレーションの機構について調べるため、近年、DNA 結合タンパク質がDNA に対して結合する様子を一分子観察され、分子間の結合力をはじめさまざまな特性が計測されている。これらの計測のスループットを上げてさらに多種のDNA 結合タンパク質の特性を計測するには、汎用の計測系を構築して適用することが望まれる。そこで本研究では、一分子のDNA とDNA 結合タンパクとの相互作用を調べることを目的として、相互作用によって発生する力を一分子レベルの感度で計測する計測システムを開発した。光ピンセットは、光の放射圧を利用してマイクロメートルオーダーの大きさの粒子を顕微鏡下で捕まえ操作する技術で、力学計測の基盤技術として用いられている。本計測システムでは、二本の光ピンセットビームを入射して2つの粒子を同時に光トラップすることができ、うち一方が可動であるのでDNA を結合した粒子を操作して張力を発生させることができる。そしてもう一方の粒子の位置をナノメートルオーダーの位置分解能で計測することで、張力の変化をサブpNレベルで計測することができる。本研究では、一分子DNA の両端にビオチンを結合させ、それに分子特異的に結合するストレプトアビジンを表面に固定した粒子を捕捉して操作し、DNA の両端に結合させて力学的特性の計測を行う。測定する力学的特性としてはDNAの弾性的性質のほか、DNA結合タンパク質との相互作用によって発生する力をターゲットとしている。構築した計測システムを用いてDNA の張力を計測する実験を行い、システムの有効性を確認した。