近年,メディアプロセッサをベースにマルチメディア命令セットに加えて汎用命令セットを実行する機構を備えるプロセッサが登場している. しかし,組み込み機器では,多種の汎用命令セットがさまざまな機器で採用されており, 単一の命令セットに対応できるだけでは,メディアプロセッサとしての用途が限られてしまうため, 異なる命令セットに対応することが求められている.
そこで,本発表では実行対象となる汎用命令をプロセッサが実行できる内部命令に分解する命令デコーダについて, 専用の回路を用いて設計した専用回路型命令デコーダとメモリ型命令デコーダについて発表する. メモリ型命令デコーダはメモリに書き込まれた情報を元に分解を行い, メモリの情報を書き換えるだけで異なる命令セットに対応することができる.
本発表では,提案する命令デコーダについて パイプラインシミュレータによる性能評価とRAMに実装した場合の回路面積の見積もりの結果を報告する. メモリ型命令デコーダの必要メモリ容量は98KBとなり, 専用回路型命令デコーダを実装したプロセッサと比較して, 性能重視のメモリ型命令デコーダを実装したプロセッサは,IPCの低下率は33%となり,回路面積は75%増加した. 一方,面積重視のメモリ型命令デコーダを実装したプロセッサは,IPCの低下率は38%となり,回路面積は36%増加することがわかった.