生体力学解析のための多重等値面Marching Cubes法の開発

横山 裕己 (0751140)


生体組織の力学解析や医用シミュレーションにおける臓器変形の表現では,腫瘍や層構造などの不均質な弾性分布をモデル化することが求められる.個々の症例から弾性モデルを生成するには多くの時間が必要であり,弾性を設定するためには複雑な操作が必要なソフトウェアなどの専門知識も必要なため,多忙な医師でも簡便に利用できる環境の構築が求められている.

生体深部の臓器や軟組織の弾性を計測によって得る方法はまだ十分に確立しておらず,メッシュ形式などで記述された形状モデルに対して文献値などの値を元に一様の弾性率を与えているか,あるいは,部分的に異なる弾性率を手動で設定するアプローチが取られている.しかし,生成後のメッシュに対して弾性率を割り当てる際に,弾性率が変化する箇所に適切に頂点が配置されていなければ弾性率の変化を精緻にモデル化することができない.また,局所的に異なる三次元弾性分布を手動で定義することは容易ではない.

本研究では,弾性ボリュームに対して弾性率が変化する箇所に重点的に頂点を配置するメッシュ生成法を提案する.メッシュ生成にはMarching Cubes(MC)法をベースとする.ただし,従来のMC法を複数回用いてメッシュを生成した場合,物体形状の変化や頂点が重複して生成される問題がある.そこで,MC法がメッシュを生成する際に,弾性ボリュームを直方体セルに分割後,各直方体セルにエッジ単位でメッシュを生成していることに着目し,エッジにIDを割り当てることで本問題の解決を図る.このことで,内部に等値面を持ったメッシュを生成し,さらに弾性ボリュームの値を参照することでメッシュの各要素に弾性率を自動付与する.本発表では,サンプルデータに対して提案手法を用いてメッシュを生成した結果を報告する.