16S rRNA遺伝子を用いたヒト常在細菌フローラの多様性解析

宮崎 菜穂 (0751124)


ヒトの体内には膨大な数の常在細菌がフローラを形成し、それらはヒトの健康に大きな影響を及ぼしていると考えられる。そのため、ヒト常在細菌フローラの研究は、単に細菌の群集構造を明らかにするという目的に留まらない重要なテーマとなっている。ヒト常在細菌フローラの有効な解析手法のひとつは、系統マーカーである16S rRNA遺伝子配列を用いた系統解析であり、細菌種の同定および、細菌間の系統学的距離を測ることが可能である。

本研究では、GenBankに登録されているヒト常在細菌の中で、ヒトのGut(腸)、Skin(皮膚)、Mouth(口腔)、Vagina(膣)の4部位に生息する常在細菌の16S rRNA遺伝子配列を徹底的に収集し、in silicoにて細菌種を再同定した上で、細菌フローラの多様性やその特徴を、フローラを構成する菌種組成から系統学的に見出すことを試みた。

その結果、ヒト常在細菌フローラを構成する細菌は系統的に多様であり、特にGutに生息する細菌は多様性が高いことが推測された。また、ヒト常在細菌はフローラ毎に異なる群集構造を形成しており、各フローラに特徴的な細菌の門や属の存在が明らかになった。さらに、ヒト常在細菌フローラには、門レベルでの分類が不明な配列も多数存在し、新規の細菌の門が存在する可能性が示唆された。これら新規の細菌である可能性が高い細菌種は他環境中の広い範囲に渡って存在していることが分かった。

また本研究では、取得したヒト常在細菌16S rRNA遺伝子配列の情報についてデータベース化を行い、ヒト常在細菌の情報を検索できるWebアプリケーションも構築した。