複数投影像の重畳によるHDR表示

三宅 玲 (0751123)


既存のディスプレイ装置で表現可能なダイナミックレンジや階調数は限られており,装置の表現域を超えたダイナミックレンジの画像を表示すると,黒潰れや白飛びの問題が発生する.よりシーンに忠実な画像を表示するためには,表示画像のダイナミックレンジを拡張し,階調数を増加させる必要があり,そのような広範囲なダイナミックレンジと階調数を持つ画像の表示をHDR(High Dynamic Range)表示という.HDR表示を実現する手法として,入力画像の輝度分布に応じてバックライトの輝度を局所的に制御する手法や,複数のディスプレイ装置の映像を重畳させる手法がある.しかし,これらのHDR 表示はディスプレイ装置の画面サイズ及び視野角が制限されるため,多人数へのHDR コンテンツの提示が困難である.本研究では,プロジェクタを複数台用いたHDR 表示手法について述べる.提案手法はカメラで撮影された画像からシーンの輝度値や反射特性を取得し,取得した情報からシーンを構成する要素画像を生成する.さらに,各要素画像をプロジェクタに割り当て同一のスクリーンに投影することで,HDR 表示を行う.提案手法はプロジェクタを用いるため,HDR コンテンツを大型スクリーンに投影でき,多人数にHDR コンテンツを表示できる.実験では,提案手法によるHDR 表示と従来のディスプレイ装置による表示を比較し,提案手法の有効性を示す.