本研究では,歩行や自動車での移動といった日常的な 動作対からでも,その類似度に応じた強度をもつ鍵生成を行える手法を提案する. 提案手法では,まず加速度データが描く波形の周波数と位相の類似度を表すコヒーレンスと, 加速度の分散値の差分という2つの尺度をユーザ動作の類似度とみなす. 次にその類似度に従って暗号鍵の生成法を選択し,類似度の高い動作対では 各周波数の強さを表したパワースペクトルの量子化によって短時間に高い強度の共通鍵を, 類似度が中程度の動作対ではある程度の時間をかけて共通鍵を生成する手法を提案する. 被験者の動作に基づく性能評価の結果,類似度が高い場合は1分間で 217.7 bit相当の, 類似度が中程度の動作でも約2分間で Bluetooth の PIN コード相当の共通鍵を 生成できることがわかった.
本発表ではまず、日常的な動作の類似度を評価する手法について述べる. 次に,類似度に基づいた加速度データから共通鍵を生成する各手法について述べる. 最後に、実測データに適用した結果について説明し,その性能を考察する.