物体注意の研究動向

古田 賢吾 (0751103)


人間はあらゆる情報から物体や事象を選択的に知覚し認識する.今のところ,物体の知覚と認識のメカニズムは十分にわかっていない.しかし,注意はそういった機能の重要な役割を担っていると考えられている.これまでの研究で,たとえ物体が空間的に重なっていたとしても,人間は他の物体を無視して特定の物体に直接注意を向けられることが数多く示唆されている.本稿では,物体に対する注意の研究を概観する.最初に,空間と特徴に対する注意と対照させる形で物体に対する注意の研究が概観される.また心理物理学,神経科学的方法を用いて,物体注意研究をいくつかの領域に分けて概観する.さらに臨床医学からの示唆が議論される.