曲率を指標とした局所構造のボリューム可視化

平田 優 (0751099)


 近年、医療や生物学の分野において、様々なイメージング技術を用いて大規模なボリュームデータが取得されている。医療の分野では、Computed Tomography (CT) やMagnetic Resonance Imaging (MRI) などの撮像機器の普及により、膨大な医用画像が得られている。一方、生物学の分野では、ナノ・ミクロ領域の画像は、これまで蛍光顕微鏡によって二次元データとして取得されてきたが、共焦点顕微鏡や二光子顕微鏡の開発など、顕微鏡技術の向上に伴い、大規模で高精細な三次元ボリュームデータとして得られるようになってきた。
 ボリュームデータを可視化するための手段として、ボリュームレンダリングの技術が広く利用されている。しかし、ボリュームレンダリングは伝達関数への依存性が高く、現状一般に用いられている伝達関数では、輝度値が同じ領域を区別することができない。これは、従来の伝達関数が、ボクセル全体の輝度値や座標系に依存した勾配情報を用いており、局所構造を区別できないためである。そこで、生体内部に位置する構造を効率的に可視化するためには、局所構造を定量化する指標に基づいて可視化する必要があると考えられる。
 本研究では、医用・生物学データを対象にして、神経や血管などの管状の構造に着目し、必要に応じて他の構造も見せつつ、ユーザーが見たい構造を強調する可視化を目指す。そこで、画像の二次微分によって得られるHesse行列の固有値に着目し、輝度値と固有値から色・不透明度へ変換する新しい伝達関数を提案し、CT や二光子顕微鏡といった幾つかのイメージング機器によって撮像されたボリュームデータから局所構造を効率的に可視化することを実現する。生物学データにおいては、メモリ上に乗らない大規模なデータであるので、詳細度制御(LoD)により提案手法の適用を可能にする。
 本発表では、幾つかのデータに対して、曲率を指標としたボリューム可視化を適用し、膜のような構造や神経・血管などの管状の構造を選択的に強調する可視化が達成された結果を報告する。