携帯電話端末へのコンテキストアウェア動画広告配信を最小限の携帯電話網利用で実現するWiFi併用協調ダウンロード方式

花野 博司 (0751092)


携帯端末に動画広告を配信する場合, ユーザのコンテキスト(置かれている状況や今後の予定)に あった広告を配信すると高い宣伝効果が期待できる. ユーザごとにコンテキストは様々であり, これに伴ってユーザに合わせて配信すべきコンテンツ およびその配信タイミングは多様化する. しかし,多数のユーザに対し様々なコンテンツを異なる時間に配信すると, 携帯電話網の通信帯域を圧迫してしまう. 本研究では,多数のユーザに対しコンテキストに合わせた動画広告配信を行うこと を目的として,WiFiと携帯電話網を併用することにより, 携帯電話網をできるだけ圧迫しない動画広告配信手法を提案する.

本研究で扱う問題では, ユーザのコンテキストからユーザにとって有用なコンテンツおよびその デッドライン(ダウンロード期限)を端末が自動的に決定する. 提案手法では,コンテンツのファイルを断片に分割して取り扱う. 近傍の端末群が同じコンテンツをダウンロード中の場合, それらの端末が別々の断片を携帯電話網から取得し, WiFiのアドホックモード経由で交換することで,携帯電話網の圧迫を軽減する. さらに,デッドラインまでの時間の長さに応じて携帯電話網の使用量を 自動調整する携帯電話網調整機能を導入する. 提案手法では,多数の端末が存在する時にもうまく動作させるため, サーバによる集中制御は行わず, 各端末が自律的・確率的に取るべきアクションを決定するアルゴリズムを提案する.

典型的な都市環境を想定し, エリアサイズ500m×500mに携帯端末数500台が 存在する場合についてシミュレーション実験を行い 提案手法の性能を評価した. その結果,提案手法が携帯電話網の使用量を最大98.9%削減できること, 端末密度が高い方がより携帯電話網の使用量を削減できること, 端末のモビリティに対して頑健であることを確認した. また,提案手法が,様々なダウンロード期限に合わせて 携帯電話網の利用率を自動調整し, 各端末によるダウンロード期限内のコンテンツ取得を可能にすることを確認した.