本研究で扱う問題では, ユーザのコンテキストからユーザにとって有用なコンテンツおよびその デッドライン(ダウンロード期限)を端末が自動的に決定する. 提案手法では,コンテンツのファイルを断片に分割して取り扱う. 近傍の端末群が同じコンテンツをダウンロード中の場合, それらの端末が別々の断片を携帯電話網から取得し, WiFiのアドホックモード経由で交換することで,携帯電話網の圧迫を軽減する. さらに,デッドラインまでの時間の長さに応じて携帯電話網の使用量を 自動調整する携帯電話網調整機能を導入する. 提案手法では,多数の端末が存在する時にもうまく動作させるため, サーバによる集中制御は行わず, 各端末が自律的・確率的に取るべきアクションを決定するアルゴリズムを提案する.
典型的な都市環境を想定し, エリアサイズ500m×500mに携帯端末数500台が 存在する場合についてシミュレーション実験を行い 提案手法の性能を評価した. その結果,提案手法が携帯電話網の使用量を最大98.9%削減できること, 端末密度が高い方がより携帯電話網の使用量を削減できること, 端末のモビリティに対して頑健であることを確認した. また,提案手法が,様々なダウンロード期限に合わせて 携帯電話網の利用率を自動調整し, 各端末によるダウンロード期限内のコンテンツ取得を可能にすることを確認した.