無線通信シミュレーションにおけるTCP通信特性に対して電波特性が与える影響に関する調査研究

橋本理 (0751091)


現在TCP/IPを対象とした無線通信における様々な研究が行われている。 その分野の研究においてよく無線シミュレータが使用され、 シミュレータの結果によって研究の有効性が示されることが多い。

無線通信においては用途に応じて複数の通信規格が用いられ、 また、電波特性から伝搬距離や遮蔽物の状況、通信機器の移動や電波干渉により 様々な影響を受ける為、有線通信とは異なる部分が大きい。 その為、無線シミュレータにおいては実環境において発生する伝搬損や マルチパス干渉の計算の為に様々な伝搬モデルが実装されている。 無線シミュレータを扱う上で、これらの伝搬モデルや物理層、MAC層における通信規格の パラメータ設定は重要であるが、TCP/IP通信を対象とした研究においては軽視されがちである。 理由として、下位層の電波特性に関するパラメータ設定が 上位層のTCP/IP通信に与える影響についての情報蓄積が少ない、難解であることが挙げられる。

そこで本研究では無線シミュレータを用いて、物理層やMAC層、伝搬モデルといった 無線固有のパラメータを変化させTCP/IP通信特性を詳細に評価する為に TCP通信による伝送特性の調査を行った。得られた実験結果から 無線シミュレータの特性や注意点を抽出し、知見を得ると同時に、 現実に即したシミュレーション環境の構築を行う為の示唆を与えた。