泳者周辺に発生する気泡の3次元位置計測

野村烈 (0751090)


競技水泳の訓練において,泳者がより速く水中を進むために,前進時に生じる水の乱流による抵抗を解析することがある.競技中に近い状態で泳者周辺の乱流を可視化するためには,泳者に特殊な器具やセンサなどを付けるという負担を与えることなく乱流を計測する必要がある.本研究では,泳者の周辺に発生する気泡の3次元軌跡の可視化を目的とし,2台の高速度ビデオカメラを用いたステレオ計測手法を提案する.提案手法では,泳者の動作に合わせて多数発生し,乱流の影響を受け複雑な動きをする気泡を,フレーム間及びステレオカメラ間で正確に対応付けるために,一般的なステレオ法で使われる輝度のパターンに加えて,画像上の気泡の2次元的な挙動と,フレーム間及びカメラ間における最尤法の枠組みで,気泡の3次元的な軌跡の幾何学的な整合性を考慮する.具体的には,気泡の挙動は,隣接フレーム間での変位確率として表現し,最尤法の枠組みで気泡の2次元軌跡を推定する.幾何学的な整合性は,2台のカメラで得られた2次元軌跡上の各点が,多くのフレームでエピポーラ拘束を満たすか否かで評価し,2次元軌跡同士の対応付けに利用する.さらに提案手法では,エピポーラ拘束の判定や,対応付けられた2次元軌跡からの3次元軌跡の推定に,光の屈折を考慮したカメラの投影モデルを用い,精度向上を図る.実験により,提案手法は,輝度パターンのみを用いた単純な手法よりも,精度良く2次元的に気泡を追跡できることを確認した.また,気泡の3次元軌跡の推定では,推定した3次元軌跡を別視点から撮影した画像に投影することで推定精度を検証した.