センサ出力のオンライン選択によるロバストな状態推定

長井 健祐 (0751083)


状態フィードバック制御では,制御対象の内部状態をリアルタイムで知る必要がある. そのためセンサ出力を用いて状態を推定するが,時にはセンサから正しい計測値が得られない(真値と大きく異なる)ことがある.例えば,レーザによる距離計測において,計測対象とセンサ間に障害物が入る場合や歪ゲージにより構成された圧力センサの計測系に振動が加わる場合などが挙げられる. このような場合,正確な状態推定は行えないため,複数のセンサを用意し,その中からオンラインで選択して状態推定を続行できれば望ましい.

本発表では,一時的に正しいセンサ出力が得られない例を紹介し,複数のセンサにより構成された計測システム中の一部で正しい計測値を得られない場合においても,正常な状態推定が可能となる推定法を提案する.

提案する状態推定法は,得られるすべてのセンサ出力から,どれが正常かをオンラインで判定し,判定されたセンサ出力のみを用い,切替え型オブザーバで状態推定を行う.オブザーバの設計は,切替えを伴う誤差系の安定化に帰着されるので共通のLyapunov解で計算できる.また,同時にH∞制御理論に基づき,未知外乱から評価出力までのノルム比が最小となるようなゲインは,線形行列不等式を解くことで求まることを述べる.さらに,提案法の有効性を数値シミュレーションおよび検証実験で示す.