楕円体近似による最大出力許容集合のオンライン計算法に関する研究

土居 優太 (0751081)


現実の制御システムには様々な拘束が存在する. 拘束によって信号が飽和してしまった場合, ワインドアップ現象により性能が劣化し,最悪の場合,システムの故障や大事故を起こす恐れがある. このことから,制御工学の分野では拘束を有するシステムの制御法について盛んに研究が行われてきた.これらの制御法では,最大出力許容集合が広く用いられている.この集合は,拘束を満たすための必要十分条件を与えるため設計論に非常に有用である反面, 計算コストが大きい. よって,オンラインでの集合計算が要求されるような未知の外部入力が存在するシステムに従来の設計論を用いることは困難である. 従来法では,拘束の種類を大幅に限定することでオンライン計算を回避してきた.

そこで,本研究では,拘束の達成をオンラインで判断できる条件を示し,その条件に用いられる集合の構成法を提案する. 本発表では,提案法である,最大出力許容集合を楕円体近似するための計算手法を示す.提案法は,まず有限個の最大出力許容集合のサンプルをとり,その凸包を求める.そして,凸包に内包される最大体積楕円体を構成する. この楕円体を用いることで,拘束を満足するための十分条件を記述でき,その達成をオンラインで判断することが可能となるので,未知の外部入力が存在するシステムに対し従来の設計論を利用できるようになる.また,拘束の種類を限定する必要があった従来法に対し,提案法は拘束の種類を限定する必要がない. 最後に,楕円体をスイッチング制御とリファレンスガバナに適用し,数値例を通してその有効性を示す.