脳推定電流を用いたブレイン・マシン・インタフェース

玉川 崇人 (0751076)


近年,脳科学と計算科学の発展を背景に,Brain Machine Interface(BMI)と呼ばれる研究が注目を浴びつつある.BMIは,脳と機械を直接つなぐインタフ ェースであり,四肢などの身体を介さずにコンピュータやロボットなどを操作する究極のインタフェース技術である.

BMIでは脳の情報を計測し,その情報を解析する必要があるが,BMIの高性能化には高い時間解像度に加え,脳の各領域での活動を知ることが重要である .しかし,現在,BMIで多く用いられている脳波計は,高い時間解像度を持つ計測装置ではあるが,脳からの信号が頭蓋や脳髄液を経由する過程で拡散や減 衰が起こるため,頭皮上のセンサで計測されたデータからは脳の各領域がどのように活動しているかを知ることは難しい.

そこで,このような問題に対して脳波計の計測データから脳内の各領域での活動を階層ベイズ法により推定を試みる.階層ベイズ法により各領域の活動 が正しく推定できれば,脳波を使ったBMIの弁別性能の向上が期待され,脳波では不可能と思われている高性能なBMIの開発も可能になると考える.

本論文では,脳波に階層ベイズ法を適用することで高性能なBMI技術を開発することを目的とした.開発した階層ベイズ法を用いたBMI技術の性能を検証 するために,4択の運動イメージ実験(左手・右手・舌・足を動かすイメージ)を行い,得られたデータから脳内の電流を推定し,弁別を試みた.その結果 ,従来手法に比べて有意に性]能が向上することが示された.