MRを用いた和綴じ訓練システム
加門 紗香 (0751036)
本発表では,和綴じの伝統継承を目的とした和綴じ訓練システムについて述べる.和綴じとは,日本古来の製本技術である和装本の代表的な製本手法の一つである.和綴じは特別な機械を使わないことから,日本では各家庭において広く用いられてきた.しかし近年では,和綴じを伝承できる人が減少し,和綴じはほとんど知られていない.こういった和綴じをはじめとする伝統工芸を継承していくには,完成した伝統工芸品だけではなく,制作技術も含めて保存し,伝承を受ける者が対話的に制作工程を体験することが重要である.
本研究は,和綴じ作業をデジタルアーカイブし,複合現実感技術を用いた訓練システムを提案することで,和綴じ作業の継承を促すことを目的とする.提案する和綴じ訓練システムは,計測部と提示部との二つの要素からなる.計測部では,本を固定するための作業台に取り付けたカメラを用い,カメラより撮影される手元画像から針領域を抽出し,針位置から作業状況を把握する.提示部では,プロジェクタを用いて訓練者へ支援情報を提示する.本論文では,システムを試作し,カメラ画像からの針位置計測,プロジェクタによる支援情報提示を行った結果を示す.