下オリーブ核glomeruli構造に対する抑制性シナプス入力の効果
鬼塚 美帆(0751030)
下オリーブ核ニューロンは、小脳皮質の主要な入力である登上線維の源である。
このニューロンは、glomeruli構造内でギャップジャンクションにより結合しており、
様々な条件で同期的でリズム的な発火をするが、覚醒ザルではリズムと同期のどちらも観測できないと報告されており、そのダイナミックメカニズムは明らかになっていない。
下オリーブ核へ$GABA_A$受容体拮抗薬のpicrotoxinを投与すると、同期リズムと非同期低頻度発火を交互に繰り返す現象が見られる。
従来の理論研究では、ギャップジャンクションの結合コンダクタンスを大きくしてpicrotoxin投与後の発火パターン(picrotoxin condition)が再現されてきた。
しかし、本当はそうでなくて、glomeruli構造内の抑制性シナプスコンダクタンスの増加により、抑制性シナプス入力が下オリーブ核ニューロン同士の"実効的な"結びつきを強くしていると考えられる。
そこで本研究では、picrotoxin conditionの再現を通して、スパインに入る抑制性シナプス入力の操作によってギャップジャンクションの実効的な結合が調節可能であることを明らかにする。
実験と同じように下オリーブ核ニューロン同士の結合強度を変化させるために、詳細な下オリーブ核モデルにスパインとスパインに入る抑制性シナプス入力を加えて改良し、新たなモデルを用いて抑制性シナプス入力を変化させてシミュレーションを行った。
さらに、spine¥ compartmentの抑制性シナプスコンダクタンスのみを変化させたときと、ギャップジャンクションの結合コンダクタンスのみを変化させたときのシミュレーションを行った。
同じ条件下の実験データとシミュレーションデータ間、もしくはシミュレーションデータと他のシミュレーションデータ間のデータ間距離を計算することで、実験データと得られたシミュレーションデータのスパイク列とスパイク時系列を分析した。
その結果、抑制性シナプス入力の操作により、picrotoxinを投与する前と後の発火パターンを再現することができた。
また、解析結果と求めた抑制性シナプスコンダクタンスと実効的結合コンダクタンスの関係式から、スパインの抑制性シナプス入力の操作により実効的結合コンダクタンスが調節できると結論する。
今後は、下オリーブ核の役割を検討するために、オリーブ小脳路ネットワークモデル
のシミュレーションを薦める。