IEEE802.16e・UL-PUSCにおける受信信号相関を用いた判定帰還伝搬路推定方式に関する研究

大関 修一 (0751027)


IEEE802.16eは高速なデータ通信を移動環境でも提供可能なシステムとして注目を浴びている. また,その要素技術である直交周波数多重分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing; OFDM)は周波数有効利用やマルチパス対策において有効な伝送方式である. しかし,高速移動によるマルチパスフェージング環境下では,伝搬路が激しく変動するためにデータシンボルにおいてその変動を正確に補償する必要がある. そこで,従来方式では推定したドップラー周波数や遅延プロファイル情報を用いる最小二乗平均誤差(Minimum Mean Square Error; MMSE)方式が適用されている. しかし,ドップラー周波数や遅延プロファイル情報の推定精度が問題となり,誤り率特性が劣化する.

そこで本稿では,これらのパラメータを必要とせず,実際のシステムに適用可能な受信信号の相関のみを用いた判定帰還伝搬路推定方式A,Bを提案した. これらの提案方式では自己相関行列の雑音成分を除去することでより精度の高い自己相関行列を得ることに成功した. また,提案方式Aでは自己相関行列から得られる固有ベクトルを用いることで推定を行っており,提案方式Bでは判定誤りによる特性劣化を軽減するための工夫を行っている.

提案方式とパラメータ既知のMMSE方式との計算機シミュレーションの比較を行った結果,適当な数の固有値選択により最大0.5dB程度,誤り率特性が改善されることを確認した. また,提案方式Bにおいて判定誤りによる影響を軽減できることを確認した.