センサフュージョンによる移動体の自己位置推定 ―カルマンゲインとオブザーバゲインの構造比較―
大澤修一 (0751026)
移動体の自己位置推定の方法にはデッドレコニングとスターレコニングがある.
前者は計測周期が短く比較的高精度な位置推定が出来るが,各サンプリングごとの計測値を積算するため,
時間とともに誤差が増大したり,モデル化できない誤差が含まれてしまう.
後者は比較的簡単に大域情報が得られるが,計測周期が長く誤差分散が大きく,ランドマークが認識できない環境下では計測できないといった欠点がある.
両者は相反する問題を有しており,この問題を解決する方法としてセンサ取得情報を統合したセンサフュージョンがある.
代表的なセンサフュージョンとして拡張カルマンフィルタがある.
拡張カルマンフィルタはカルマンゲインを設計するために誤差分散行列を求める必要があり,
これは実験を繰り返すことにより得られるため,実装するためのコストが大きい.
これに代わる手法としてオブザーバと座標変換を用いた推定法がある.
この手法は大域座標系情報と局所座標系情報を計測し,座標変換により共通点を推定する.
フィルタゲイン設計に誤差モデルが必要なく,オブザーバ推定式が簡単であるという特徴を有する.
本論文では,まず格子点オブザーバによる位置推定法と拡張カルマンフィルタによる位置推定法を紹介する.
次に格子点オブザーバを変形し拡張カルマンフィルタに似た形へと式変形する.
そして,両者が一致する場合について考察し,シミュレーション,実験により検証する.
加えてこの成果を利用したカルマンゲインの設計法について述べる.