MRIによる冠動脈検査に向けた静止相の自動決定法の改善

釆野 一鷹 (0751023)


心臓の冠動脈の検査として現在主流となっているのは胸部CT検査であるが、放射線被曝と造影剤の副作用が問題となっている。 そこで、これらの問題がないMRIを使った冠動脈検査(MRCA:MR coronary angiography)に期待が寄せられている。 しかし良好な画像を得るためには心臓の静止相を見つける必要があり、現状では、放射線技師が静止相を見つけるまでのいくつかの作業を手動で行っている。 そのため検査時間が非常に長くなってしまう問題がある。 よって、現在手動で行っている作業を自動化することで、検査時間を短縮することができ、MRCAの普及が期待できる。 先行研究における静止相の自動決定の手法は、シネ画像の各フレーム間の輝度値の総和の差分をもとにしていたが、 冠動脈自体の動きを追跡していないため、精度に限界があることから改善すべき点がある。

そこで本研究では、先行研究における静止相決定精度の改善を目的とし、 テンプレートマッチングを用いて冠動脈を全フレームを対象に検出することで、 各フレームを通した冠動脈自体の動きを追跡する。 その結果をもとに、冠動脈の動きの少ないフレームを静止相とする手法を提案し、実装した結果および従来手法との比較評価について述べ、 実装結果をもとに静止相と決定する範囲について再検討し、改善した結果について述べる。 また、右冠動脈だけでなく左冠動脈による静止相の判断の必要性があることから、左冠動脈に本手法を適用した結果についても述べる。 最後に右冠動脈の追跡に失敗した例、静止相と決定する範囲、左冠動脈による静止相決定、それぞれについて考察した結果について述べ、今後の課題と合わせて報告する。