統計的手法を用いた視床神経回路網形成時における細胞形態予測

内海 将人 (0751022)


脳が実現している諸機能は,膨大な数の神経細胞が機能的な回路網を構成することで実現されている.このような巨大な回路網の配線は,主として神経の軸索形成機能によって行われる.軸索の最終的な形態決定における重要な要因は細胞外に存在する様々な誘導因子であり,軸索の先端部にある成長円錐がこれらの分子を認識する.しかし,その機構については不明な点が多く,また生物学的実験により機構のすべてを同定する事は現時点では非常に困難である.そこで生物学的実験を補う為の数理的な解析方法の確立が重要となる.

本研究では,生物学的に新規の知見を抽出する為に,生物学的な見地から妥当であると思われる軸索伸長モデルを導入する事により,細胞の形態を表す特徴量の1つである軸索長と誘導因子との関係性を推定を行った.さらに,そのモデルを基に,誘導因子が2種類混在している環境下での軸索長応答の予測を行った.

本発表では,軸索伸長モデルによる誘導因子に対する細胞応答曲線の推定結果を示し,その妥当性について議論する.また,このモデルに基づいた2因子混在環境下での細胞応答の予測結果も示し,得られた知見について述べる.