高次統計量に基づくミュージカルノイズ評価尺度とその応用

上村 益永(0751020)


本発表では,非線形処理に特有の歪みであるミュージカルノイズの客観的評価尺度を提案する.ミュージカルノイズとは,非線形な信号処理を適用した信号に発生する人工的な音色の歪みである.この特有の耳障りな音色が信号の音質を著しく劣化させ,非線形処理の実応用を妨げる一因となっている.従来のミュージカルノイズ評価方法は,聴取実験による人間の主観的な評価に頼っており,客観的な評価尺度の構築が求められている.

本研究では,非線形処理による信号の変形を統計的な観点から観測し,その変形度合を数値化する.これにより,信号に発生するミュージカルノイズの原因成分の計量を実現する.主観評価により提案尺度と人間の知覚の関係を調査し,提案尺度の正当性を検証する.

これまでは,幾通りもの手法やパラメータについて詳細なミュージカルノイズ解析を行うことは,コストの観点から現実的でなかったが,提案尺度を用いることで容易に実現できる.本発表では,代表的な非線形雑音抑圧手法であるスペクトル減算法と最小平均二乗誤差規範スペクトル振幅推定法の2手法に関して,ミュージカルノイズ発生に関する詳細な解析を行い,これらの手法のミュージカルノイズ発生の特徴を明らかにする.

本研究では,提案尺度に基づくミュージカルノイズ対策手法を提案している.提案手法は,スペクトル減算法で発生するミュージカルノイズを所望量に制御し,システムに要求される音質を保証しつつ雑音抑圧性能を最大化する手法であるが,本発表では時間の都合上割愛する.