回転映像が平衡機能に与える影響と平衡機能訓練への応用
今畑 年雄 (0751016)
ディスプレイの大型化,高解像度化により,没入感のある映像は映画やゲームなどで身近に体験可能となった.この様な映像により身体動揺が増大し,バーチャルリアリティ酔いと呼ばれる不快感が生じるため,平衡機能への悪影響が懸念さ
れる.一方で,没入感のある映像を提示し,周辺の環境が水平方向に回転する視覚刺激を継続して与えることにより,身体動揺が減少し,視運動性眼振という眼球運動の発生回数が増加する.平衡機能の高いヒトの眼振発生回数は多いことか
らも,逆に,平衡機能に良い影響を与えるとも考えられる.本研究では,回転映像による視覚刺激がヒトの平衡機能に与える影響を検証し,没入感のある映像による平衡機能訓練の可能性の調査を目的とする.実験では,平衡機能への影響を
調べるために,水平回転する実写画像を,没入型ディスプレイに提示し,眼振発生回数と重心総軌跡長の経日変化を計測した.さらに,回転映像による刺激を受けていない通常の状態での平衡機能を調べるために,回転映像の提示前後に回転
しない映像を提示し重心総軌跡長を計測した.12 日間計測した結果,複数の被験者の眼振発生回数が増加し,回転映像の刺激を受けているときも,受けていないときも,重心総軌跡長は減少することがわかった.没入環境内での回転映像がヒトの平衡機能を向上させることがわかり,没入感映像提示による平衡機能訓練の可能性が示唆された.