立体マーカを用いた仮想物体の相互反射表現

伊原 章達 (0751013)


複合現実感においてコンピュータグラフィクスで描かれた仮想物体と現実環境 を違和感無く融合するための要素のひとつとして,光学的整合性がある.特に, インテリアデザインのように,視的感覚が重要となり,細かな表現が必要とされ ている分野では,光学的整合性は重要な要素であり,写実的なコンピュータグラ フィクスを作成する上で優先すべき問題である.複合現実感においてインタラク ティブな表現を行うためには,実時間処理でのシミュレーションが求められる. しかしながらこれまで,実時間で現実環境と仮想物体の相互反射表現を違和感な く表現する手法は確立されていない.
本研究では,複合現実感における違和感のない相互反射表現を目的とし,床面 の反射率を考慮した仮想物体の映り込みを表現する手法,床面の粗さを考慮して 仮想物体の映り込みのぼけを表現する手法,および床面に映り込む立体マーカを 除去する手法を提案する.提案手法は,マーカの映り込みによる床面の輝度の変 化を解析することで床面の反射率を推定し,床面の反射率を考慮した仮想物体の 映り込みを可能とする.また,映り込みの生じている領域のエッジ部分の輝度値 の変化幅を解析することで床面の粗さを推定し,床面の粗さを考慮した仮想物体 の映り込みを可能とする.さらに,床面に映り込むマーカ像を映り込み領域周辺 の色情報を用いた近似により平滑化し,映り込みを除去する.本研究では,提案 手法を用いて実験を行い,単色および模様のある床面における反射率の推定と粗 さの推定および床面に映り込むマーカ除去結果を示し,考察を行った.また,提案手法を統合し,簡便なシステム構成によるインタラクティブなアプリケーショ ンを構築し,提案手法の有効性を示した.