無形文化財のデジタルアーカイブを行うために,本研究では複数台のカメラで対象を撮影する だけで対象の形状とテクスチャの3次元情報が得られる3次元ビデオという情報メディアを用いる. 従来の3次元ビデオでは,常に動く撮影対象の全身を全てのカメラが完全に捉えられるまで ズームアウトし,カメラを静止させていた. しかし,この従来手法では全てのカメラが対象の全身を完全に捉える必要性により各カメラに 対してズーム制限が生じる.その結果,撮影画像の高精細化に上限が発生してしまう という欠点を有する.
そこで,本研究では従来よりもズームアップ撮影をすることで対象の一部分のみを捉えた カメラを能動的にパン・チルト回転させることで対象全身の形状の正確さの低下を抑制しつつ 対象全身の高精細画像を取得する.それにより,従来よりも高品質な 3次元ビデオを作成することを目的とする. また,本論文では(1)実環境下で動的な対象をズームアップ撮影するためのシステム構築, (2)どのカメラが対象のどの部分を撮影するかを決定する手順であるカメラワーク決定手法 について述べる.