むだ時間系に関連したある積分作用素のスペクトルの数値計算法に関する研究

糸数 篤 (0751010)


むだ時間系に対する安定解析あるいは制御系設計という現実的な問題に答えるべく,これまでにさまざまな議論がされている. むだ時間系は,その時間応答が現在の状態の情報のみでなく過去の状態にも依存する 無限次元システムである.

本発表では,むだ時間系に関連したある積分作用素のスペクトルの数値計算法について述べる. この作用素は,むだ時間系を無限次元離散システムとして表現したときの状態遷移を表す作用素である. むだ時間系の安定性は,その作用素のスペクトルによって特徴づけられる. したがって,むだ時間系の安定解析はその作用素のスペクトル計算に帰着される. そのスペクトルは,関数空間を有限次元近似することで得られる行列の固有値から求めることができる.

従来手法 (高速サンプル/高速ホールド近似)では, むだ時間長よりも速い周期で動作するサンプラと零次ホールドを用いて有限次元近似している. この方法は,近似計算に対する数学的妥当性が示されている一方で,近似誤差の収束が緩やかであるといった問題があった. これに対して,本発表では,非因果的な高次ホールドを用いた方法について考える. そして,具体的な数値例でその有効性を検証する.