脊椎動物の発生過程における分節時計の分子システム

伊坂 弥花子 (0751007)


体節形成は、脊椎動物の発生過程に見られる一過性の現象である。

神経管を中央として胚の頭側から尾側へと両側に左右対称に整列する均等な球状の細胞群が現れるが、このとき、マウスの場合正確に2時間ごとに左右一対ずつの体節が付け加えられる。この分節化の周期性を理論的に解釈するために、周期性をつくりだす「分節時計」の存在が想定され、実験によって分節周期に一致して発現パターンが変化する分子(遺伝子)の存在が明らかとなった。また、発現パターンの周期的変化を数学的に説明する数理モデルもいくつかある。

本研究ではこれらの数理モデルを元に、生物学的に妥当性があり、かつ細胞群における外乱に対する周期の安定性を説明できるモデルを構築し、体節形成の時間的な規則性がどのように保持されているのかをシミュレーションを用いて解明することを目指した。その結果、分節時計の中心的役割をになう分子Hes7のみではノイズに対する耐性が不十分であるが、Notchシグナルに関わっている遺伝子群、Lfng、Nrarpといった分子が形成するネガティブフィードバックループによって、細胞群での隣接細胞からのノイズを緩和し、Hes7が安定した周期をうみだしていることがわかった。