実世界で生じる触覚情報の実時間共有に関する研究

北村 龍平(0751042)


触覚は、対象に直接接触することで知覚するものであって他人と同時に同じ感覚を得ることは容易ではなく、触覚情報を他人へ正確に伝達し共有することは非常に困難である。一方で、触覚情報の共有は、教育、エンターテイメント等をはじめとするコミュニケーションにおいて有用であり、特に、実世界において生じた実物体の触覚を実時間に伝達できれば、触覚共有の用途を大きく拡大し、教育等の用途に非常に有効であると考えられる。しかし、従来の研究は、いずれも仮想空間に構築した仮想物体の触覚情報を共有を目的とし、実世界において実物体を触れた際に生じる触覚情報共有について十分な研究はなされていない。

本論文では、実世界で生じた触覚情報を実時間で共有するためのシステムを提案する。本研究では、触覚情報を、指先で知覚する皮膚感覚と身体の動きや位置を知覚する深部感覚とからなるものとして、実物体の触覚情報を計測するためのシステムと、触覚情報の提示システムからなる触覚情報共有システムを開発した。また、触覚情報共有のためのモデルとして主観的感覚の伝達関数を定義した。

そして、提案システムの効果を確認するために、計測システムで計測した位置に対する提示システムの追従性を確認するため実験、主観的感覚の伝達関数を確認する実験、および提案システムの触覚提示能力を確認する弾性率識別力の確認実験を実施した。これらの評価実験の結果から、本研究における提案システムにより実世界における触覚情報の実時間共有を行い得る可能性を確認した。