微生物必須遺伝子とホモログ関係にある高等植物遺伝子の多様性

中川 幸雄 (0651155)


各々の生物にとって、生命活動に最低限必要な遺伝子の集合(必須遺伝子セット) を実験により決める研究がモデル微生物を中心に進められつつある。実験方法としては、 それぞれの遺伝子を破壊し生育可能か否かを調べることによって必須遺伝子が決定されている。 しかしながら、この実験方法で高等植物の必須遺伝子セットを決定することは困難である。 一方で、酵母については実験により決定された必須遺伝子セットの情報は、真核生物の必須遺伝子を決める手がかりとして重要な役割を果たす。 本研究では、単細胞真核生物から多細胞生物への必須遺伝子の多様化と機能の関係を理解するために、酵母の必須遺伝子をもとに、 酵母とシロイヌナズナのそれぞれの遺伝子においてオーソログ関係にある遺伝子対を抜き出し、以下の4つのグループに分類した。 (1)1to1 group, 酵母対シロイヌナズナ遺伝子が1対1に対応;(2) 1toM group, 酵母対シロイヌナズナ遺伝子が1対多に対応; (3) Mto1 group, 酵母対シロイヌナズナ遺伝子が多対1に対応;(4) MtoM group, 酵母対シロイヌナズナ遺伝子が多対多に対応; 以上のように分類し、それぞれのグループに含まれるシロイヌナズナ遺伝子の数と機能の関係を考慮した。また酵母全体の遺伝子数から 必須遺伝子数を除いた非必須遺伝子においても上記と同様の処理を行い、必須遺伝子由来のものと比較した。 その結果、代謝関連、タンパク修飾関連等の機能郡にシロイヌナズナ遺伝子数の偏りが必須由来のグループで確認された。 これは、単細胞真核生物が進化の過程において、それらの機能に含まれる必須遺伝子を分化多様化して、 多細胞生物の高等性を獲得してきたと考えられる。